不育症(習慣流産)に対する抗凝固療法

不育症(習慣流産)に対する抗凝固療法

不育症スクリーニング検査の中で抗リン質抗体が陽性の場合、又は血液凝固因子などが異常の場合に、抗凝固療法を行います。
抗リン脂質抗体は、細胞膜の構成成分であるリン脂質に結合する蛋白に対する自己抗体で、これには多くの種類があります。血液検査で検出されるその中のいくつかのものが、不育症と関連するとされています。一方血液凝固因子とは、通常血管内を流れる血液は固まることがありません。しかし出血した場合には凝固する必要があります。すなわち、血液を溶かす因子と凝固因子との間で絶妙なバランスがとられているのです。しかしそのバランスが崩れると血液が凝固し血栓が形成され、不育症と関連するとされています。

不育症スクリーニング検査が陽性の場合、胎盤や子宮膜の血管内に血栓ができやすく、血栓は母体と胎児間の血流の状態を悪くし流産・死産・胎児発育遅延・妊娠中毒症・胎盤早期剥離などを起こしやすくします。しかし、この検査での陽性者すべてが不育症になるわけでもなく、また、わたしのように陰性にもかかわらず胎盤梗塞を起こすということもあるようです。

抗凝固療法

血栓症の原因には、血流の異常・血管壁の以上に加え血液凝固性の亢進が関わっているため、その治療や予防には抗凝固薬が効果的です。
抗凝固薬ヘパリンと抗血小板薬アスピリンが有効で広く使用されています。ヘパリンとアスピリンの併用療法、その他アスピリン単独療法、ステロイドの併用療法が行われることもあります。また、不育症であることが妊娠以前に判明している場合、妊娠を計画する1か月前から漢方薬の柴苓湯を開始し、妊娠したら中止する、漢方療法を行う場合もあります。
副作用が起こることもあるため、担当医師より治療前によく説明を受け、十分に納得したうえで治療を受ける必要があります。

バイアスピリンについても、不育症であることが妊娠以前に判明している場合、妊娠を計画する1か月前から開始。妊娠31週6日まで服用。
ヘパリン・カプロシンは、妊娠してから開始し、妊娠36週6日まで注射します。また、分娩後3日間も注射を行います。1日に2回、12時間ごと1回5000単位/0.2ml太ももなどの皮下へ自己注射します。自己注射の経験がない方は入院して注射の仕方を修得します。

かかる費用(2014年時点の目安)

  • 柴苓湯:保険診療 1か月/4140円
  • バイアスピリン:保険診療 1か月90円
  • ヘパリン:保険診療 1か月10000円程度
  • カプロシン:自費診療 1か月13000円程度

また、残念ながら抗凝固療法を行っても約10~20%は流産してしまうケースがあります。そのような場合、原因を調べることが大切ですが、そのほとんどは、胎児の染色体異常であるとされ、受精卵自身の異常なのでどんな治療を行っても流産する運命にあるとされています。

※東京慈恵会医科大学附属病院 総合母子健康医療センターの不育症に対する抗凝固療法に関する説明書を引用させていただいています。

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